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焦らず教科書レベルから

微積分の基礎と数列・ベクトル〔高校2年生用〕 (中高一貫教育をサポートする体系数学)

  教科書レベルの教材をしっかり固めることが大変重要です。高校生なら、教科書で足元をしっかり固めてから次のステップへ行くべきです。決して背伸びをせず、ちょっと易しめのところからスタートしてください。学び直しの方なら検定教科書を教科書配給所で求めるか、市販されているものなら、進学校でも使用されている「体系数学」(数研出版)がオススメです。検定教科書だったら「教科書ガイド」も別途買い求めてください。教科書には問題の解答がありませんから。問題によっては略解のみです。日本の検定教科書は、小学校から高校まで、詳しい解答は一切載っていません。なお「体系数学」は、別冊で解答が付いています。

 かつての私もそうでしたが、教科書レベルが十分に固まり切らないうちに、見栄を張って、安易に東京出版の教材に手を出さないように…。エレガントな解法に惹かれたということもあります。「一対一対応の演習」「解法の探求」など、とってもいい教材なのですが、基礎がしっかりしてからというのが条件になります。

複素数平面と微積分の応用〔高校3年生用〕 (中高一貫教育をサポートする体系数学)

 「体系数学」の具体的な学習方法ですが、本文を読みながら、「例」「練習」や「例題」を解き進めていきます。「例」「例題」も見るだけ、読むだけでなく、ノートにきちんと書いてください。1周目なら書き写すだけでもよいです。高校の恩師がよく言っていました。「写すだけでも勉強なんだよ。」写経という学習方法もあるくらいですから、教科書が推奨している解き方を、書き写すことで、基礎の基礎をしっかり身につけてください。

 注意していただきたいのは、最初は、公式の導出にこだわらないことです。数学において、どうしてそうなるのかをじっくり考えることは大切なのですが、数学という教科の特性上、演習を積むことで理解が深まるということがありますから、導出にばかりこだわりすぎて、演習が疎かになると、却って、完全に理解するところまでは行けないということが起こります。

 かけ算九九 2×3=6 (にさんがろく) は、2が3つ、つまり2+2+2を素早く計算するために覚えるわけですが、小学校2年生のときは、お経のように唱えて覚えたはずです。完全に覚え込んで、いろいろな問題演習をして使いこなした後で、9が7つあるから、9×7=63 (くしちろくじゅうさん) になる、あるいは、小学校3年生の頭で学習する9×7=9×6+9=9×8-9 という仕組みが、だんだんにわかってきます。

 仏教のお経だって、意味もわからず、まずは読み込んで、自然に暗唱できるところまで行ってから、その意味を考えます。最初から、経典を一歩ずつ理解しながら覚えていくというのは、非常に不効率です。意味がわからなくても、まずはリズムに載せて覚えてしまうのです。こうしたものは、例に枚挙がありませんよね。

 数学も同様に進めていきます。最初から深入りせず、まずは、さらっと読んで、とにかく定義に従って、あるいは公式を使って、簡単な問題を解いていくのです。

 例えば、三角関数の加法定理。かつて東大でも、その導出が出題されたことは有名ですが、最初の段階では導出に深入りしません。導出方法はいろいろありますが、教科書によっては、余弦定理を利用するものがあります。そうなると、余弦定理って何だっけ?ということになり、そこでまたブレーキがかかって、なかなか前に進めません。

 第一段階では、導出には、さらっと目を通して、sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβを使って、簡単な問題から解いていきます。sin75°=sin(45°+30°)など、加法定理を適用していく問題ですね。ある程度加法定理が使いこなせるようになってから、…ところで、sin(α+β)は、どうしてsinα cosβ+cosα sinβになるのだろうと、教科書を読み返せばよいのです。

 加法定理の導出は、初学者にとっては易しいものではないので、最初の段階で深入りはしないのです。極端な話、偉い数学者たちが、sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ であることを導き出してくれているので、それを使ってみよう…でよいと思います。導出よりも、使いこなせる方が大切なのです。

 そういう意味で、加法定理の導出を完全に省いてしまった参考書も少なくありません。sin(α+β)=sinα cosβ+cosα sinβ を前提として、話を進めてしまっています。きさらぎひろし先生の「やさしい高校数学」(学研教育出版) などはそうですね。加法定理の最初の導出はありません。「初めから始める数学」(マセマ出版)もそうですね。その上の「元気が出る数学」(マセマ出版)になると、導出が出ているということがあります。マセマの馬場先生は、その辺をよくわかっていらっしゃるのです。導出にこだわりすぎると先に進めないので、もう少し学習が進んだところで、導出に取り組ませる。マセマの教材は、細かいスモールステップで、ライナップされています。

 中学校で「平行線の同位角は等しい」ことを導出不要の前提にしてしまっているのと同じですね。

 ただ、気をつけてほしいのは、導出が要らないということではないということです。基本的な演習を重ねて、ある程度理解が進んできたときに、ところで、どうしてそうなるんだっけ…となったときに、調べるものがないと困るので、教科書が必要になるのです。前出の「やさしい高校数学」からスタートする手もあるのですけど、公式によっては、導出が出ていないものもあるので、私は「やさしい高校数学」は推奨していません。かなりいい教材なのですが。

 前述の「初めから始める数学」も、すばらしい教材ですが、私は推奨していません。解説が素晴らしいということは、逆にいうと、解説がないとわからない程度の問題を扱っているということです。初学者には、ここではなく、解説すら要らないレベルの問題が、まずは必要なのです。数学Aの個数の処理でいうと、6!=6×5×4×3×2×1クラスの問題ですね。こういう問題の演習が、実は一番大切なのです。

 ですから、教科書の例、問、例題、練習にしっかり取り組み、基礎の基礎を確実に固めましょう。

 教科書の章末の「演習問題」はやりません。このレベルの問題は、別の参考書を使います。